病気について知る病気の解説

高齢者に見られる皮膚の病気

2021年6月4日

 皮膚の老化には、生理的老化と紫外線による光老化があります。皮膚は老化に伴って皮脂腺の活動性の低下や角質細胞間脂質の減少、天然保湿因子の減少で角質水分の含有量が低下し、老人性乾皮症の状態になります。光老化ではシミや深いシワ、皮膚がんが出ます。

 老人性乾皮症は、四肢伸側や背部の皮膚が乾燥しかゆみも伴う病気で、冬期に憎悪します。この病気は単に皮膚が乾燥しているわけではなく湿疹も伴っていますので、最初にステロイド外用剤で炎症を治癒し、落ち着いてから弱いステロイド外用剤や保湿剤で維持します。強いかゆみを訴える方には抗ヒスタミン薬の内服を追加します。
多形慢性痒疹は、高齢者の側腹部や腰臀部に好発し、かゆみの強い孤立性の丘疹や小結節が多発する病気で、長年にわたり軽快憎悪を繰り返します。患者さんはこの強いかゆみに悩まされます。
 帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因の病気です。日本人は9割の人がこのウイルスを体内に持っていて、3人に1人が帯状疱疹になります。加齢やがんなどで免疫力が低下すると発症します。左右一方にピリピリする痛みが出現し、その部位に帯状の配列の赤みや小さな水ぶくれが出ます。片側性のピリピリとした痛みがあれば皮疹の有無をよく観察し、皮疹が出れば早く医療機関を受診してください。
 最近では複数回、帯状疱疹になる方も増えています。「入院の必要はありませんか」という質問がよくあります。今は新しい経口抗ヘルペスウイルス薬が次々と出て、帯状疱疹はほとんど外来通院で治療ができます。
 しかし、免疫低下を伴う基礎疾患を有する場合、水痘様の発疹が多数見られる汎発性帯状疱疹、眼合併症を伴う場合、顔面神経麻痺を起こす耳介部の帯状疱疹などの重症例は入院したほうがいいでしょう。

 皮膚がんも高齢者の病気で、増えています。日光角化症は、慢性的な紫外線刺激による早期のがんで、この時点で切除すると進行がんにはなりません。有棘細胞がんは、日光角化症や熱傷瘢痕、慢性放射線皮膚炎などの先行病変に種々の発がん因子が関与してがんとなります。
 基底細胞がんは、最も頻度が高い皮膚がんで高齢者の顔面に好発し、黒色小結節とその中央の潰瘍化、表面に樹枝状血管を認めます。放置すると周囲の正常組織を破壊しながら大きくなりますが、他臓器への転移はまれです。悪性黒色腫は非常に悪性度が高く、手・足・爪に出ることが多い黒褐色病変です。

 最後にがんと密接に関係して起こる皮膚病変について説明します。これには、ほぼ全例にがんがあるものから、時に合併することがあるので、検査しておいた方がいい程度のものまで種々です。
 皮膚筋炎は眼周囲の浮腫性紫紅色斑や指関節背面の扁平隆起性丘疹が出ます。筋症状としては筋力低下や筋肉の自発痛、圧痛があります。約3人に1人に内臓のがんが見つかります。
 脂漏性角化症は掌蹠以外のほぼ全身に出るイボ状の扁平な丘疹で、かゆみや痛みはありません。高齢者ではほぼ全員に認められます。ところが、これが数カ月以内に急速に多発しかゆみを伴うことがあります。これはレゼルートレラ徴候と呼ばれ、がんがある可能性があり、全身検索が必要です。
 気になることがあれば皮膚科医に相談してください。

補足
湿疹…皮膚の表面に起こる炎症の総称
痒疹…痒みを伴う丘疹が散在する皮膚疾患
丘疹…直径1cm以下で皮膚表面が小さく隆起した状態
発疹…見た目で分かる皮膚の変化
皮疹…皮膚にできる発疹
掌蹠…手のひら、足の裏のこと