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梅雨入り前から秋まで続く花粉症 ~ 雨の日に悪化する場合も ~

2021年6月18日

 松山では今年、スギ・ヒノキ花粉が去年に比べて約4倍飛散しました。と言っても例年の平均と比べると決して特別多かったわけではありません。しかし、例年に比べてかなりひどい花粉症症状を訴える患者さんが目立ちました。去年の1回目の緊急事態宣言等で外出を控える方が多くほとんど症状が現れなかったため、より一層今年の症状を強く感じたのかもしれません。

 花粉症の方は、例年よりかなり早く梅雨に入ったことから、症状が早々に軽くなると安心しているかもしれませんが、まだまだ要注意です。5月以降はイネ科の花粉症に気を付けなければなりません。イネ科の花粉症については誤解が多いので、少し説明します。
 イネ科というと田んぼにある稲の花粉症だと思っている方が時々いますが、それは違います。稲は風媒花ですが、花が咲いている時間は午前中の2時間くらいととても短く、咲き終わると、もみが閉じてしまい、二度と開きません。このようにして稲は一つの花の中で自家受粉する作物であり、遠方まで花粉を飛ばさないため、花粉症の原因になりにくいのです(この仕組みのおかげでコシヒカリやササニシキなどそれぞれの品種の栽培がきちんと維持できています)。
 イネ科花粉症のシーズンも、やはり稲刈りのイメージから秋がメインだと思われがちなのですが、5月から7月に飛散するカモガヤや秋のススキも原因となるので、むしろ晩春から夏がメインであり、幅広い季節にまたがっています。

 晩春から秋までの花粉症というと、梅雨や秋の長雨の時期は花粉の飛散が少なくなるので、その分、症状が軽くなることが多いのですが、雨が降ったのに花粉症の症状がひどい気がするという患者さんが時々います。それはなぜかというと…、雨が降っているときは気圧が下がっています。すると体内のヒスタミン(※)が増えるのです。その結果、アレルギー反応が強くなるということが、まず考えられます。

※体内の神経伝達物質で、アレルギー反応を引き起こす物質の1つ

 花粉は種類によって大きさは違いますが、直径は約20~100μmほどで、鼻の中に入っても、そのままの状態ではアレルギー反応は起きません。しかし鼻の粘膜に付着した花粉は粘膜の表面で徐々に膨らみ、やがて破裂してアレルゲン粒子が放出されます。このアレルゲン粒子が粘膜内に侵入して初めてアレルギー反応が起こります。
 この現象と同じように、雨の日には雲の中でたくさんの花粉が破裂して粒子を放出しているのかもしれません。雨が降る前には下降気流が発生していますので、花粉の滞留している空域と下降気流が重なったときに、花粉や粒子がたくさん降り注いでいる可能性があります。

 雨だから花粉症はありえないと思い込んでしまうと、鼻かぜと判断してしまいます。スギ・ヒノキの花粉症がある方や毎年、夏に鼻やのどに違和感がある方は耳鼻咽喉科受診をおすすめします。鼻の中の観察やアレルゲンを調べる検査などでしっかりと原因を確認して適切な治療を受けましょう。