病気について知る病気の解説

希望を持って毎日を暮らしましょう

2021年7月16日

 100年前のスペイン風邪は当時の世界人口が約18億人の時に、5億人が感染して日本では38万人が亡くなったと言われています。医師で歌人の斎藤茂吉も当時長崎医専(現在の長崎大学医学部)の教授として長崎にいたのですが、スペイン風邪にかかり一時は危ない時期があったそうです。
 現在の私たちが直面しているパンデミックは、スペイン風邪を彷彿とさせます。日本でもワクチン接種が少しずつ進み希望もみえていますが、たくさんの命をうばったコロナはやはり憎いです。亡くなられた方々には心からお悔やみ申し上げます。
 「コロナのせいで」悪くなったことは山ほどあるでしょう。しかし残された私たちは「コロナのせいで」と考える一方で、「コロナのおかげで」と考える事も必要かもしれません。誰もがコロナを通して感じたことの一つが、命の大切さだと思います。生きていることが当たり前ではない、だからこそ感謝することの大切さに気付かされました。
 ほかにも、ゆっくり家族で話し合う機会が増えたとか、食べ物や清潔に気をつけるようになったとか、メリットにも目を向けてみてはどうでしょう。心配や不安が減るかもしれません。嫌なことがあったと思ったら、でもそのことによるメリットもきっとあるはずだと考えてみるのです。心のバランスを図ることは、生き生きとした人生を送る上で大切なことではないでしょうか。
 だれがいつ、コロナウイルスに感染するかはわかりません。私も明日感染してしまうかもしれません。しかし、先が分からないからこそ、その日その日を丁寧に暮らすことが大切なのだと感じます。丁寧に暮らすという事は、日常にある何気ない幸せに意識を向ける事です。たとえば早起きして日の出を見ればすがすがしい気持ちになるでしょう。空や風に、草木や花に、季節の食べ物に生命の尊さを感じるかもしれません。また自分以外の誰かの健康を祈るだけでも幸せな気持ちになるでしょう。日常にある幸せに少し目を向けるだけで、人間は変わることができます。
 ロシアの文豪トルストイの創作民話に「人は何によって生きるのか」という短編があります。罪を犯した天使ミハイルに神は三つの問いを与えて、人間として生活するよう命じます。第一の問いは「人の心の中には何があるのか」、第二の問いは「人が与えられてないものは何か」、そして、第三の問いが「人は何によって生きるのか」というものです。 トルストイはこの答えを明確に示しているわけではありません。勝手な解釈ですが、一言でいうと「愛すること」なのではないかと私は思います。
 今回のパンデミックが人類にとってどんな意味を持つかは分かりませんが「どんな悪いことも必ず終わる」「未来は明るい」という方角に自分の舵を向けましょう。
 冒頭に述べた斎藤茂吉もスペイン風邪から回復したのちウィーンとミュンヘンに留学して医学の研究に没頭したそうです。