病気について知る病気の解説

腕が上がらなくなったら… ~50肩のおはなし~

2021年8月6日

 40歳から60歳代に良く起こる50肩は肩関節の病気で、正式には肩関節周囲炎といいます。肩関節周囲炎は痛みと運動制限をもたらす病気の総称です。
 肩の違和感から始まり、じわじわと痛みが強くなり、突然激痛となり肩が動かせなくなることが多いです。特に洗髪、衣服の着脱などの日常生活動作に支障がでたり、夜間痛があることが特徴です。
 多くは片方の肩に起こりますが、左右両方に起こることもあります。痛みは自然に治っていきますが、良くなるまでには1年から1年半くらいかかる事もあります。
 関節は、軟骨や靱帯、筋肉との結合部の腱などが連動して働いています。これらの組織は加齢とともに固くなり、血流が悪くなって、もろくなります。もろくなると、ちょっとした刺激で炎症や損傷を起こすことがあります。特に炎症を起こしやすいのは、関節のつなぎ目を覆っている回旋腱板筋と呼ばれる部位です。腱板筋は肩関節の動きに大きく関わっていて、老化や外傷により炎症を起こす事が多いです。
 発症から1、2カ月を炎症期といい、激しい痛みがあり、腫れたり、熱を持つことがあります。多くの場合、安静時痛、夜間痛を伴います。この時期は肩や腕を動かさず、安静を保ちます。
 炎症期の後は拘縮期へ移行します。拘縮期に入ると、関節の動く範囲が制限され、腕を上げたり、後ろに回す動作で痛みます。衣服の着脱がしにくくなるなど日常生活に支障が出るようになります。
 拘縮期に肩が動かしにくくなるのは、患部の組織が癒着しやすくなるためです。少しずつ肩を動かしながら組織の癒着をほぐしていきます。入浴して身体を温めた後に、筋肉の運動やストレッチを行うと効果的です。その後は回復期へと移行します。運動時の痛みや運動制限が次第に改善する時期です。根気よく続けていくと肩の可動域が徐々に改善していきます。ただし自己判断での放置・不適切な運動により、症状が悪化したり回復が長引く事もあります。できるだけ早期に整形外科を受診し、リハビリテーションを行うなど適切な治療を受けることが大事です。
 リハビリテーションは理学療法士の管理のもと、炎症期では物理療法や肩甲骨の動きを広げる運動ストレッチなどを、拘縮期では個人の仕事やスポーツ特性を踏まえた動作練習やトレーニングを行います。回復期では肩周囲の筋力強化や腕を上げるための土台となる肩甲骨を安定させるトレーニングなどを行います。
 多くの場合は1年から1年半くらいの間に改善してきますが、激しい痛みが続く場合は、内服、注射などによって痛みを和らげたり、精密検査を行い、他の病気がないかを調べます。保存治療では回復が難しいと判断されたら手術治療を行うこともあります。
 症状を長引かせないためには、早期から痛みに合った治療やリハビリプログラムを行うことが大切です。