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軽いはずの“まぶた”が重いのはなぜ?

2021年9月3日

 後天性の眼瞼下垂(まぶたと筋肉のつながりが悪くなった状態)の方は、「まぶたが十分に開かない」という訴えで、眉だけが上がって目は開いていないことが多いです。ところが、眼瞼下垂を疑って受診される何割かの方は「まぶたが重い」という訴えをお持ちで、お顔を見ると目は十分に大きく開いています。まぶたには骨などの重量物はなく、とても軽いのですが、そのまぶたが重く感じられる。これはどういうことなのでしょう?
 ほとんどの場合、これは眼瞼痙攣を伴った、軽度の眼瞼下垂症です。まぶたというのは非常に複雑な仕組みで、こすることなどで軽度の眼瞼下垂になると、それを補うために自動的に目を開く筋肉の力が強くなっていきます。眼瞼痙攣というのは、それに合わせるように目を閉じる筋肉や眉間にしわをよせる筋肉にまで力が入ってしまう病態です。これらの筋肉の力の分だけ重みを感じてしまうわけです。
 眼瞼痙攣は軽症のうちはほとんど症状がありません。目が乾きやすくなったり、逆に涙が増えたりします。やや重症化するとまぶたの重みが出てきます。さらに重症化し、開く力より閉じる力が上回ると普通に目を開けていられなくなります。
 また、眼瞼痙攣を伴うと、眼瞼下垂だけの場合よりも、頭痛・肩こり・睡眠障害・疲労感・眠気・自律神経失調(まぶしさ、腸の障害、頻尿、冷え症、多汗、動悸)が起こりやすくなります。中にはこれらの症状がまぶたの症状よりもつらくて受診される方もおられます。
 眼瞼痙攣の治療として、ボツリヌス菌の毒素注射が広く行われています。ボツリヌス毒素注射は筋肉の動きを抑えるもので、侵襲は少なく、顔の変化は起こりません。身体に合わない人がまれにいること、効果が得られにくいこともあります。1回の注射で治るわけではないので、年に3~4回繰り返し続ける必要があります。
 一方、10年ほど前から、手術で効果的に治療する方法が発表されてきました。全ての患者さんの症状が完全に治るというわけではありませんが、根治することも多いです。ただ、手術ですので、傷あとが残ることや、顔貌の変化などがあります。また、全国的にもわずかな施設でしか行っておらず、改良を積み重ねて手術手技が完成し、一般的に行われるようになるまでは、まだ何年もかかると思われます。
 全ての疾患に対する治療でも言えることですが、今は情報がたくさん出回っておりいます。どの施設でどのような治療を行っているか、いろいろと調べて(誤報もあるので注意しながら)、自分に合った治療を見つけましょう。