病気について知る病気の解説

スマホでめまい体験 検査の一助

2021年9月1日

 多くの人が持っているスマートフォン(スマホ)でめまいの症状を疑似体験できます。
 例えば、右耳のメニエール病の患者にめまい発作が起きると、30分から6時間ほど右向きのめまいが出ます。この際に患者の眼球の動きを観察する検査を行うと、眼球は右にすばやく左にゆっくり反復運動しています。「眼振」と言います。
 スマホで自分の正面を動画撮影しながら、この反復運動をまねしてみましょう。カーテンなど縦模様のものがオススメです。落下に注意しつつ、40㌢ほど左にスマホを振って一瞬で右に戻すということを10秒以上リズムよく繰り返します。撮影後、動画を確認すると左に流れる景色は早すぎて分かりにくいですが、右に繰り返し流れる景色は見えるはずです。
 一方を素早く、反対をゆっくりとスマホを時計回り・反時計回りに繰り返し回すと、回旋性の眼振が出現した時の景色を撮影できます。
 頻度が高い「良性発作性頭位めまい症」は、起床時に突然めまいが出現することが多いのですが、夕方に病院を受診するころには症状が落ち着いているため、眼振検査をしても異常所見がはっきりしないことがあります。その他のめまいでも、発作のときには病院に行けず、ようやく受診した時には異常がなく原因が分からないことも少なくありません。 原因を調べるためには問診し、CT・MRI検査、聴力検査などをすることも大切ですが、耳鼻科医にとって眼振検査はとても重要な検査の一つです。もしめまいの時に景色が流れる方向が確認できたら、それを教えてください。右に流れたら右向き眼振というように、当時の眼振がある程度予想できます。また、受診の際はカラーコンタクトレンズをしないようにお願いします。赤外線カメラの眼振検査の際、眼振(特に回旋性)が分かりづらくなるからです。
 耳の奥にある内耳は気圧変化を受けやすく、台風のシーズンで気圧が変化しやすい時に、めまいを訴える患者さんが少なくありません。原因を突き止め、適切な治療をしたいと思っています。(毎日新聞9月1日付)