病気について知る病気の解説

突如襲ってくる激しい背部痛。 もしかすると泌尿器科の病気かもしれません。

2021年10月8日

 今回は、尿路結石が起こった方の状況と過程をもとに治療についてご説明します。

 真夏のむせ返るような暑さが続いていたある日、Aさんはその日の仕事も終わり、帰宅してビールを飲み、ひと息ついたのもつかの間、右の背中にこれまでに経験したことのないような激痛が起こり、たまらず救急車を要請しました。救急車が到着し搬送された救急病院で診断された病名は尿路結石。Aさんは座薬を入れてもらい痛みが落ち着いたため、翌日に泌尿器科を受診することを勧められ、そのまま帰宅しました。
【解説1】
 尿路結石は夏に約2倍近くの結石発作が起こりやすいとされており、7~9月に多く、10月には明らかに減少すると言われています。その理由として、発汗のために尿量が減少して尿が濃くなることが挙げられます。
 尿路結石はその位置により、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石などに分けられ、激しい背中の痛みを伴うものは尿管結石がほとんどです。尿管結石による痛みは尿路の急激な閉塞により、腎臓内の圧が上昇して、壁が引き延ばされ尿管が痙攣することにより生じるとされています。気分不良や吐き気、冷や汗、腹部のはり、顔面蒼白などの症状も伴うこともあります。
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 Aさんは翌日に泌尿器科を受診して検査をしたところ、やはり尿管結石の診断でした。医師は画像を見ながら「ここに5mmの結石があるね。まずは薬で自然に出ること期待しましょう。痛み止めも出しますね」と説明しました。
【解説2】
 10mm以下の尿管結石では自然排石が期待できるため、まず薬物治療が勧められます。ウラジロガシエキスや一部の漢方薬などは排出促進作用があると言われており、現在まで尿管結石に対して使用されています。また欧米諸国では、前立腺肥大症で使用される薬の一部も排出促進や痛みの緩和に有効と言われ始めており、結果的に痛み止めの使用頻度を減らせることが報告されています。
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 1週間後の排尿時に違和感があると同時に排石を確認したAさんですが、「もうこんな痛みは勘弁」と泌尿器科に結石を持っていき、何とか再発を防ぐことはできないかと相談しました。すると「尿を薄めることが大事です。水分を多めにとるようにしましょう」と言われました。
【解説3】
 水分を多く摂取し、尿量を増加させることは、結石の成分や原因を問わず尿路結石の再発予防の基本です。再発予防には、1日尿量2000ml以上となるように水分摂取をおすすめします。
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 Aさんの体験談はうまく自然排石された一例です。では10mm以上の結石の場合はどうするのか?、どれくらいの期間で排石されるのか?、排石されない場合はどうするのか?、女性の場合の治療はどうなるのか?、腎結石、膀胱結石の治療は?、など様々な疑問があると思われます。
 そのような疑問にお答えし、結石の耐え難い痛みに対してお力になる、それが泌尿器科医の役割と考えます。背部痛の原因の一つに尿路結石があることを忘れないようにしてください。