病気について知る病気の解説

手の使い過ぎにご用心

2022年2月25日

 年が明けると、「年末に忙しくて手を使いすぎて痛くなった」と言って受診される患者さんが増えます。
 これらの痛みには、指先の関節が脹れたり、変形する「へバーデン結節」、指の手のひら側の付け根が痛くなったり、指が伸ばしにくくなる「腱鞘炎」、手首の親指側が痛くなる「ドケルバン腱鞘炎」、親指と手首の間の関節が脹れたり、変形する「母指CM関節(親指の付け根の関節)症」のほか、手首の手のひら側の腱鞘炎により、親指から薬指にかけて痺れたり、力が入りにくくなる「手根管症候群」など、名前の付いた疾患があります。例えば腱鞘炎の場合、指を動かす「腱」というひものようなものが、腱鞘という通り道を動くことで指を曲げますが、炎症を起こすと腱鞘が狭くなり動きにくくなって腱鞘炎が起こります。
 原因のほとんどが使い過ぎによるもので、妊娠・出産前後や閉経後の女性に多く見られることから、女性ホルモンとの関係も疑われています。また、以前の骨折や関節リウマチなどの病気が原因のこともあります。炊事や家事などだけでなく、近年のコロナ禍で、在宅でのパソコン作業が増えたり、ゲームのしすぎ、同じような作業を続けたり、使い方が悪かったりすると起こりやすくなります。
 予防には、同じ作業だけを続けず、少し手を休めたり、合間に違う作業を取り入れてください。パソコンの場合、手首をクッション性のあるパッドに置き、指先の力を抜いて軽くキーを打つなどしてください。親指でものをつまむときには、指先をそらしてつまむのでなく、少し親指を曲げてつまんだ方が無理がかかりません。  

手の使い方
 このほか、指から手首にかけてのストレッチも効果があります。肘を伸ばして手首を曲げたり反らしたり、親指を握り込んで、手首を小指側に曲げるなどを、作業の前後や入浴時などにすると良いと思います。

手のストレッチ①
右手に左手を添えて、下方向に曲げる
右手に左手を添えて、上方向に反らす

手のストレッチ②
親指を握り込み、手首を小指側に曲げる

 治療法ですが、鎮痛剤の内服や外用剤の貼付、炎症を抑えるための注射、温熱療法、レーザー治療、テーピング、装具装着などの保存的治療を根気よく行えば、ほとんどは改善します。どうしても改善しなければ、手術が行われます。狭くなった腱鞘を切って広げたり、関節の形成術などが行われます。
 痛みの原因に心当たりがなかったり、他の関節も痛くなる時は、関節リウマチなどが原因のこともありますので、放置せずに整形外科を受診して適切な診断、治療を受けてください。