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糖尿病 感染症重症化に注意

2022年3月2日

 糖尿病は国民病として知られるほど患者数が多い病気です。厚生労働省の報告では、2019年時点で糖尿病が強く疑われる人は20歳以上の男性の約5人に1人、女性の約9人に1人に上ります。また、70歳以上では男性の約4人に1人、女性の約5人に1人と、その割合は年齢とともに大きくなります。糖尿病は自覚症状がないことも多く、知らず知らずのうちに病気が進んでしまい、病院を受診した時には既に多くの合併症が出ていることもあります。定期的に健康診断などを受けて、早い段階で糖尿病を発見し治療に取り組むことが大切です。
 糖尿病は、感染症にかかりやすく、また重症化しやすいといわれています。その原因として、細菌やウイルスから体を守る免疫を担当する白血球の機能を高血糖が弱らせること、糖尿病の合併症である血管障害によって、感染した場所に十分な酸素や栄養、治療薬が届かないことなどが挙げられます。糖尿病でかかりやすい感染症には、肺炎、膀胱炎や腎う腎炎などの尿路感染、足壊疽などの皮膚感染、結核などがあり、細菌の中でも抗菌薬が効きにくい耐性菌に感染しやすくなることが知られています。
 さらに、感染症にかかった時点で血糖値が高いと重症化しやすく、入院や死亡のリスクが高くなります。冬に流行するインフルエンザも糖尿病で重症化しやすいことが知られています。このため、糖尿病患者は肺炎球菌やインフルエンザなどの予防接種を受けることが推奨されています。
 全世界で流行している新型コロナウイルスについては、糖尿病との関連はまだ不明な点も多いのが現状です。現時点では、糖尿病患者が感染しやすいということはないようですが、他の感染症と同じく重症化の危険は指摘されています。まずは感染予防のためのマスク着用や手洗い、三密を避けるなど対策をしっかりと行い、普段から血糖値を良好に保って重症化を防ぐことが何より重要です。(毎日新聞3月2日付)