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頭頸部がんについて

2022年3月11日

 頭頸部とは顔から首までを指し、耳、鼻、副鼻腔、のど(咽頭・喉頭)、そして舌などの口腔、さらには甲状腺、耳下腺などが含まれます。
 頭頸部がんは、これらの顔から首までの範囲にできるがんの総称です。多くの種類があり、各々の発生原因や治療法、予後が異なります。頭頸部には、顔の形を維持したり表情をつくったりという見た目を整える働き、さらに呼吸をしたり食べ物をかんだり飲み込んだりする働き、そして声を出したり、味・においや音を感じたりするなど、生命維持や社会生活に重要な機能が集中しています。そのため、頭頸部がんでは、がんのできる場所によっては、腫れや痛み、出血がある、飲み込みにくい、声がかすれる・出にくいなど、日常生活に支障を来すさまざまな症状が現れ、生活の質が大きく低下することが問題になります。
 頭頸部がんの発生頻度は、すべての種類を合わせても、胃がんや大腸がん、肺がんなどに比べると低く、日本人の罹患数はがん全体の約5%で、年間1万5000〜2万例です。ただ、近年は罹患数が増加しており、特に咽頭がん、口腔がんが増加しているといわれています。
 頭頸部がんの発生には喫煙や飲酒が大きく関わっており、多くは中高年の男性に発症しますが、がんの種類によっては若年者や女性にも発症します。他の要因として、中咽頭がんにおいてヒトパピローマウイルスの関与が最近明らかになりました。また舌がんでは歯並びが悪い、入れ歯が合っていないなどの理由で、歯や入れ歯が常に舌にあたることによる機械的な刺激やむし歯、口腔内の不衛生が発生要因の1つと考えられています。
 頭頸部がんの主な治療法には、手術、放射線療法、薬物療法があります。これらのうち、どの治療法を中心にするか、単独で、あるいはいくつかを組み合わせて行うかは、がんの種類や進行度によってガイドラインを参考に決定します。
 頭頸部には人が生きるため、社会生活をおくるために、重要な機能が集中しています。そこで頭頸部がんの治療は、がんの種類、進行度、年齢、ほかの病気の有無などに加え、職業のような社会的背景なども考慮し、治療効果と機能・臓器温存の両立を目指し、一人ひとりの状況に応じた治療法を選ぶことが大切になります。
 どんながんでもそうですが、大事なのは早期発見と予防です。最近では胃カメラの際に咽頭や喉頭の早期がんが見つかることも多くなってきていますので、人間ドックなどでの定期的な胃カメラをお勧めします。また前述のような症状が気になるようでしたら、近くの耳鼻咽喉科を受診して下さい。