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画像下治療ってなに?

2022年4月8日

  IVR(アイ・ブイ・アール)と呼ばれる種類の治療法があります。医療のさまざまな場面で活躍していて、日本語では「画像下治療」と訳されます。
 メスを使って病変に到達し行う外科的な治療と異なり、針穴ほどの小さな入口からカテーテルなどの細い医療器具を入れて行われます。血管、胆管など体にもともとあるトンネルを介したり、直接細い器具を皮膚から病気の部位に差し込んだりして体の悪い部分に到達します。画像診断装置で体の中を透かして見ながら慎重に行う、体表にほとんど傷を残さない優しい治療です。
 TVドラマなどでも心臓のカテーテル治療などはよく出てきますが、実際にはそれ以外にもたくさんの領域での治療に応用されています。
 例えば、血管が破れて出血していたら破れた血管の近くに素早くカテーテルを進めて塞いだり(止血)、がんの近くの血管から抗がん剤を流したり、血流を止めて細胞を殺したり(がんの治療)、動脈硬化などで傷んだ血管を風船で拡張して血流を増加させたり (血管形成術)、最近では発生初期の脳梗塞に対してもカテーテルで血栓を取り除いたりすることもできます(急性期脳梗塞の治療)。その他、透析治療施行の補助、動脈瘤の治療、子宮筋腫の治療など…。頭の先から足の先まで活躍しています。
 レントゲンによるX線の発見からはじまる画像診断の技術を治療に応用しようとする試みは、1960年代あたりから本格的にはじまったのですが、昨今の画像診断テクノロジーの進歩とともに近年急速に進化しています。
 治療の流れですが、仮に不幸にも交通事故に遭ってお腹の中のどこかで動脈から多量の出血が起こったとします。外から見ても何処から血が出ているか分かりません。手術で止めようにも何処にメスを入れて良いのか見当も付きません。困りますよね。そんなときは、造影剤を注射しながらCTを撮影します。これでミリ単位の精度でどの血管から血が出ているか分かるのです。この方法では0.35cc/minの微量の出血から検出できると言われています。
 その後、高性能のコンピューターで画像を解析し、立体的な三次元画像を作成します。これによって、どこの血管を通れば出血部位に到達できるか、そして血管がどのような形で分岐しているかが直感的に分かるようになります。あとは、ワイヤーとカテーテルを上手く操作して目的の血管に誘導し、詰め物をするだけです。目的部位が明確な場合には、数分で止血が完了できることもしばしばです。
 X線などを使用して行う場合には一定の被曝は伴いますが、医療機器の進歩は目覚ましく、低い放射線量で診療ができるようになってきています。当然、被曝より治療によるメリットが大きいと判断される場合にのみ行われます。また、万能の治療というわけではなく、症例によっては同じ種類の病気でも外科的手術や内視鏡治療などの他の方法が適している場合もあります。
 このような、優しい治療があることを、ぜひ多くの方々に知っておいていただきたいと思います。