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不妊治療の保険適用についての話題

2023年12月15日

福井ウィメンズクリニック 福井敬介 先生

  2022年4月から少子化対策として不妊治療に公的医療保険(以下保険)が適用されました。これにより不妊治療に対する社会的認識が高まり、働きながら治療を受ける人にとっては追い風となっています。

 また、治療費はこれまでの全額自費と助成金制度を組み合わせた支払い方法から保険の自己負担分、先進医療の自費分、高額医療補償制度、民間医療保険という種々の支払い方法の利用が可能となり、経済的な負担も軽くなっています。

 

 現在、保険適用となっている治療内容と治療費(このうちの3割を自己負担)について説明すると、人工授精は主に精子の数や運動性が低い方、あるいは性交渉がうまくいかない方に対して行われ、治療費は1万8200円です。

 次に体外受精・顕微授精は卵管がつまっている方、人工授精を繰り返してもうまくいかない方や精子の状態の悪い方、原因不明(機能性)の方が対象です。治療費は卵や胚の個数により幅があり、採卵術(3万2000~10万4000円)、体外受精・顕微授精管理料(体外4万2000円、顕微4万8000~12万8000円)、受精卵・胚培養管理料(4万5000円~13万5000円)、胚移植料(新鮮胚7万5000円、凍結胚12万円)です。また精巣内精子採取術(12万4000円または24万6000円)は、無精子症の男性に行います。

 

 保険適用にはいくつかのルールがあります。まず治療回数と年齢に制限があります。妻の年齢が40歳未満の場合は6回、43歳未満では3回まで、43歳以上は保険適用とはならず全額自費となります。この治療回数は移植する回数のことで採卵回数ではないとう点が、以前の特定不妊治療助成制度と異なります。

 次に保険診療では従来の自費診療をすべて受けられるわけではなく、定められた範囲の薬剤、検査、治療法で実施されます。今回保険適用の対象とならなかった診療は自費診療となり、保険と組み合わせることはできません。一部でも自費診療を行う場合は、全額自己負担となります。

 保険として認められなかった診療の中には今後保険給付を認めるかどうか評価するものがあります。これを先進医療といい、保険と組み合わせることのできる治療です。 

 現在、不妊治療に関連したものとして子宮内膜受容能検査、子宮内膜刺激法など13項目が認められています。先進医療については施設によって実施可能な内容が異なる場合がありますので、医療機関のホームページ(HP)等を参考に相談されることをお勧めします。

 また、この先進医療にかかわる自己負担を助成する制度が2023年4月から開始されております。詳細については各自治体のHPを参考にしてください。

 このように不妊治療にかかわる保険制度は最新の医療技術や助成金制度が取り入れられ少しづつ進化してきています。さらに2024年4月には診療報酬の改訂により新たな保険治療法が追加され、さらに身近な治療となることが期待されます。