自己点検・自己評価・学校関係者評価

令和元年度 自己点検・自己評価活動報告

A.本校の自己点検・自己評価と学校関係者評価の概要

1.本校の自己点検・自己評価と学校関係者評価

本校の自己点検・自己評価(以下「自己評価」という)は、学校の教育理念・目標に照らして授業評価をはじめ自らの教育活動について毎年、実施する方法と、3年周期で総合的・体系的で全方位的に行う自己評価がある。

3年周期で行う全方位的な自己評価の目的は、学校が抱える課題の有無とその内容や程度を把握し、改善点を見出し、教育活動の質向上を目指すことにある。その際、自己評価の指針として、厚生労働省が提示する「看護師等養成所自己点検・自己評価指針」(厚生労働省)を用いている。評価項目は、【教育理念・教育目的・教育目標】、【教育課程経営】、【教育・学習・評価過程】、【管理運営・財政】、【入学】、【卒業・就職・進学】、【地域社会/国際交流】、【研究】等の8カテゴリー・41下位項目・129評価項目にわたり、4段階の評価基準で自己評価点をつけ、結果を考察する。自己評価結果のさらなる客観的・透明性の確保のために学校関係者評価を実施する。委員は、看護職能団体の代表者、看護業務に専門的知識を有する者及び学校教育に関する有識者4名程度にお願いしている。

このたび、令和2年4月から適用となる高等教育の修学支援新制度(文部科学省)の該当校となったことから、認定要件の一つに、毎年、実施する学校関係者評価が求められた。そこで、従来からの3年周期の全方位的な自己評価と連動した学校関係者評価を維持しつつ、学校と直接関係する卒業生、保護者、地域有識者、関係業界の方々を委員とする学校関係者評価を新たに設けた。

この新たな学校関係者評価では、本校の自己評価結果について、評価のポイントとして、自己評価結果の内容の適切性・今後の改善方策の適切性・重点目標や評価項目等の適切性・学校運営の改善に向けた実際の取り組みの適切性の視点から評価をしていただく。このことにより、学校の現状と課題について共通理解を深めて、相互の連携を図り、地域ニーズに応える魅力ある学校づくりを推進することができる。

なお、学校関係者評価導入時に、第1看護学科・第2看護学科・准看護師科の3課程すべてを評価するには時間的制約が生じることと、1つの課程への評価の視点・内容等は他の2課程にも適用できるとのご意見をいただき、学校関係者評価の対象課程は、看護師3年課程の第1看護学科を評価対象の課程としている。

B.松山市医師会が看護教育を担うことについて

2011(平成23)年残暑号の『松山市医師会報』の巻頭言で、学校長が松山市医師会員に対して、直接医師会員の医療機関に就職するか否かに拘らず、当地域の総体的な看護力の向上に資する人物を育て送り出すという「人材育成事業」を通じて、広く地域社会に貢献するのだという、「社会貢献」の発想が、医師会が看護教育を担う目的である。なかでも、准看護師養成については、第1看護学科設立準備時以来、存続か廃止について議論を重ねながら今日に至っている。現在は、法的に存続する以上、地域医療に貢献するためには、社会のニーズに応じた質の高い自律した看護職を育てるという方針をたて、最終ゴールは准看護師ではなく、看護師免許取得を目指すように進学指導を行い、中学卒入学生の場合は、在学中に高卒認定資格取得を支援して進学に備えている。

C.学校の現況および特徴

Ⅰ.現況

1.学校名松山看護専門学校(設置主体一般社団法人松山市医師会)

2.所在地

愛媛県松山市柳井町2丁目85番地

3.学科

医療専門課程第1看護学科(看護師3年課程)修業年限3年

医療専門課程第2看護学科(看護師2年課程昼間定時制)修業年限3年

医療高等課程准看護師科修業年限2年

4.学生定員および教員数(令和2年5月1日現在)

学生定員(名)

課程

学科

1学年定員

1学年

2学年

3学年

合計

医療専門課程

第1看護学科

40

44

44

41

129

医療専門課程

第2看護学科

40

26

30

28

84

医療高等課程

准看護師科

40

42

45

87

教員数(名)

課程

学科

正規職員

非常勤職員

専任教員

(学科長含む)

実習指導教員

医療専門課程

第1看護学科

8

2

10

実習指導教員2

医療専門課程

第2看護学科

7

1

8

専任教員1

医療高等課程

准看護師科

5

1

6

専任教員1

Ⅱ.特徴

1.学校の概要(第1看護学科)

2007(平成19)年4月 松山看護専門学校医療専門課程第1看護学科3年課程(全日制)を1学年定員40名で設置

2015(平成27)年4月 第1看護学科と第2看護学科は厚生労働省から専門実践教育訓練講座の指定を受け適用開始

2.地域の特徴

松山市は、愛媛県の中部に位置する県庁所在地で政治・経済の中心都市として成長し、平成12年には中核市に指定された人口約50万人を有する四国最大の都市である。 市街地は北東部に高縄山系、東部に石鎚山系があり、両山系の間に石手川、重信川などによって形成された松山平野が大部分を占め、温暖な瀬戸内海式気候((年平均気温16.5℃)で、台風の影響もはるか南東に位置する四国山地が遮り、南予や四国の反対側の徳島市に比べるとはるかに少ない。

松山市は東温市、伊予市、松前町、砥部町、久万高原町の5市町村とともに愛媛県が定めた6つの圏域の一つである松山圏域(人口約65万人)を構成する。高齢化率は全国平均をやや下回っているものの、年々増加を続けている。(平成27年の推計値は松山市24.4%、全国平均26.8%)

松山市が定めた地域圏域で見ると、本校は、行政・文化・生活面等に関する施設が集中している松山市中心部の番町公民館に含まれ、ブロック圏域では東雲・八坂・素鵞地区とともに東拓南の圏域に属する。

松山市は、利便性の高い公共交通機関が伊予鉄道の電車・伊予鉄バスのバスを中心に発達しており、市内の主だった拠点の多くに公共交通だけで行くことができる。本校は松山市駅から1駅または徒歩15分、JR松山駅から市内電車に乗り継いで約20分で通学できる。第1看護学科の主たる実習施設である愛媛大学医学部附属病院は学校近くの駅から横河原線の利用により約30分で行き来ができる。県立中央病院、松山赤十字病院をはじめ実習施設の多くは松山市内に位置しているため実習環境として恵まれているとともに、講師派遣の協力も得られやすく学校運営の大きな力となっている。一方、松山市駅を中心に、看護大学2校、五年一貫校1校、看護専門学校1校と本校を合わせた計5校が近隣にあることから看護職を目指す若者が多く集い、各校が共存・共栄を目指しつつ、本校にとっては学生確保に悩む地域でもある。

3.学生および教育の特徴

本校への入学希望者は、例年、中予を中心とした愛媛県内在住者が9割前後を占める。入学者中、高校新卒の割合は約8~9割前後で年々微増傾向にあるため、入学者の平均年齢は20歳未満で推移している。社会人入学試験は定員の1割前後を募集しているが、本校が平成27年4月から適用となった専門実践教育訓練講座の指定を受けたことから約4割前後の応募状況が続いている。

学生指導に関しては、学生は地域の宝であり預かっているという意識を持ち、大切に慈しみ、休学・退学を出さないきめ細やかな指導方針で教員も日々、学生とともに

学び合い,育つ「共育」を信念として、学生に寄り添い、成長を支援している。

進路に関してはほぼ毎年、1~2名の助産師課程進学希望者がいる。進学者以外は希望施設へ100%就職、そのうち実習施設でもある国公立病院へ約6~7割が就職、県外への就職は約1~2割で、地元への就職率の高さは本校の特徴であり、教育理念で示す地域医療への貢献が実践できている。

看護師国家試験の合格率は、過去5年間の平均が97.9%で、全国平均の89.4%を上回って安定した高い合格率を維持している。不合格者には翌年の合格に向けて指導を続け、就職先決定の支援を行う。最近の学生の傾向として高校新卒が多い学生であるが、多様性のある学力で、学習習慣の定着から指導することも少なくない。

本校の教員は、臨床経験年数が長く、確かな看護実践力を強みとする教員が多く、授業に還元できている。臨床で新人看護師教育や学生指導に携わった経験を有する者、地域で保健師や助産師で活躍していた者、管理職経験者や大学院卒業者等など多様なメンバーの力を結集した教育活動ができている。本校では、専門分野Ⅰ・専門分野Ⅱ・統合分野の授業の一部を外部の講師に依頼はしてはいるが、各分野の殆どの授業時間と臨地実習指導を専任教員1~2名で担当せざるをえない現状があり、法的な最低数を配置はしていても実態として専任教員数の増員が課題である。非常勤の実習指導教員は専任教員と連携を図り、熱心で的確な実習指導で実践モデルとして学生の学びの推進力となっている。

本校では、松山市医師会のバックアップを受け、実習施設を確保できている。

D.自己評価

1.平成29年度学校関係者評価(平成30年2月19日実施)

1)総評

【総評】(学校関係者評価報告書から抜粋) 今回、学校関係者評価は、「看護師等養成所自己点検・自己評価指針」、平成28年改訂の「学校評価ガイドライン」および、平成28年11月以降に改訂された指定規則を参考に実施した。 前回、学校関係者評価は平成25年に受審され、カテゴリー「Ⅳ教授・学習・評価過程」についてのみ評価を受けている。貴校では、その結果を基に段階的に改善を重ねられていて、改善に向けた考え方や内容は法的根拠に基づいており、検討中の部分も含めて一貫性・整合性もついている。今後も更に検討を重ねられ、より質の高い教育が実践されることを期待する。

2)重点課題

平成29年度学校関係者評価の結果、改善が必要な重点課題は以下の6項目であった。

  1. 入学者受け入れ方針(アドミッション・ポリシー、AP)・教育課程の編成及び実施に関する方針(カリキュラム・ポリシー、CP)・卒業生の認定に関する方針(ディプロマ・ポリシー、DP)の作成
  2. 現行カリキュラムの一層の充実
  3. カリキュラム改正準備としてカリキュラム方向付け段階の見直し
  4. 准看護師科卒業生への職能成長への支援/li>
  5. 「地域社会」や「国際化」への対応
  6. 研究活動等の充実

3)重点課題に対する取り組み

取り組みは、平成30年度と令和元年度で行った。①、②、③はカリキュラムに関するもので、特に、①の3つのポリシー作成は、高等教育の修学支援新制度の認定要件の一つであり、学校関係者評価委員のコメントでも改善に取り組む課題として最多の意見数を占めた。松山市医師会立の看護師等養成所として地域医療に貢献する人材を育成するため、3つのポリシーを示す意義は大きく、平成30年度に策定した。3つのポリシーを策定する意義は、教育機関にとっては教育目標の共通理解・カリキュラムの体系化・改善サイクルの確立・本校の特色の広報であり、入学希望者にとっては本校が期待する学修成果の理解・卒業時に求められる学修成果の理解を示し、社会に対しては本校と社会の連携を推進するものである。各ポリシーの説明は以下のとおりである。

  • ○ディプロマ・ポリシー(DP:卒業認定の方針)は、本校の教育理念を踏まえ、どのような力を身につければ卒業を認定するのか(第1看護学科と第2看護学科は専門士の称号を付与するか)を定める基本的な方針であり、学生の学修成果の目標となるもの。
  • ○カリキュラム・ポリシー(CP:教育課程編成・実施の方針)は、ディプロマ・ポリシーを達成するために、どのような教育課程を編成し、どのような教育内容・方法を実施し、学修成果をどのように評価するのかを定める基本的な指針。
  • ○アドミッション・ポリシー(AP:入学者受け入れの方針)は、本校の教育理念・教育目標に基づいて、ディプロマ・ポリシー、カリキュラム・ポリシーに基づく教育内容等を踏まえ、入学者を受け入れるための基本的な方針。

これらをふまえて、シラバスは、学生の自学自習を促すとともに組織的かつ一貫性のある教育活動を推進するために、記載方法の手引きを一部改訂し、新たなシラバスの様式を令和元年度に作成した。新たに追加したのは、授業内容に関わる実務経験(職種・資格)やディプロマ・ポリシー(DP)との関連性の記載項目である。

また、④の「准看護師科の職能成長への支援」と⑥の「研究活動等の充実」に関しては、平成30年度と令和元年度の2年間で取り組み、令和元年度末の愛媛看護研究学会で口頭発表の機会を得た。研究成果は、学生の職能成長の支援に活用している。

⑤の「地域社会」や「国際化」への対応については、専門学校である本校が、どのように地域や国際化を捉えるかを改めて概念整理をする必要がある。カリキュラム改正の趣旨を踏まえ、専門学校でできること、強みとなることを考え、整備をする予定である。

重点課題の改善には学校全体で取り組むことが重要で、そのことで成果も向上することから、看護専門学校理事会で承認された運営方針を3課程で共有し、各科ごとに、改善が必要な重点課題を入れ込んだ運営目標と具体的な取り組みについて計画を立案する。5月の学校運営委員会で、各科ごとに前年度の運営目標評価を報告、新年度の運営目標を発表して承認を受け、改善に全員で取り組む。

各科の学校運営目標の振り返り(評価)は年度末に教職員全員で実施する。方法は、運営目標の各下位項目について評価基準に基づき得点を出し、到達度を確認する。運営目標の評価に関しては学生の意見も評価に含める。日頃の授業評価や学生自治会の意見、学生個々の声を含め。毎年度、教育目標の到達に向けてステップアップしていく学年別目標の到達度評価や学校生活に関するアンケート結果等を反映した学校運営目標の評価に取り組んでいる。令和元年度は新型コロナウィルス感染症の感染拡大防止のため臨時休業が続き、卒業前にアンケート調査を終えていた3年生の意見を中心に反映した。

2.令和元年度第1看護学科の学校運営目標の評価結果

評価基準 3:評価結果を活用している 2:問題点を明らかにしている 1:現状を把握している 0:評価していない n.a.該当しない

運営方針

運営目標

具体的な取り組み

得点

Ⅰ教育成果の向上

1.教育内容と方法の充実を図り、看護師国家試験合格率100%を維持する。

1)安全・安心して学習できる場を提供する。

2.2

2)授業計画を実施し、教育内容・方法を改善する。

2.2

2)―①授業研究や学生アンケートを活用する。

2.1

2)―②再試験・再実習が前年度より減少する。

2.1

2.カリキュラム改正を見据えた教育課程の点検・整備を行う。

1)現行カリキュラムの点検を行い、課題を抽出する。

1.5

1)-①看護教育に求められるニードと制約を明らかにする。

1.5

1)-②ディプロマ・ポリシー、アドミッション・ポリシーと整合性のある科目を選定する。

1.9

2)卒業生就業調査を実施し、教育内容や方法の改善点を把握する。

1.8

3.社会人基礎力を経年的に育成する。

1)自ら気づき、考え、発言し行動できる機会を提供する。

2.3

1)-①学生が計画的、主体的に学習に取り組めるよう

に支援する。

2.6

1)ー②教科内・外活動を通して連携や協働を体験できるように支援する。

2.3

4.卒業率95%を維持できるように学生維支援の充実を図る

1)休学者・退学者を前年度より減少させる

1.9

1)-1面接を定期的に実施し、課題のある学生は教務会議で共有し、支援の方向性について検討する。

1.9

1)-②教員間・保護者間の連携を密にとる。

2.0

5.教員の資質の向上を図る

1)教員数を確保し教育の質を担保する。

1.0

1)-①ホームページや看護協会、職業安定所等を活用する。

1.4

2)ハラスメントに対する正しい知識・態度を持つ。

1.8

3)研修会・学会に積極的に参加する。

2.3

4)研究に取り組む。

1.3

Ⅱ学校運営の安定

1.受験者数を確保する。

(受験倍率3倍)

1)学生募集への取り組みを充実させる。

1.4

1)ー①3つのポリシーを明確にして募集要項に掲載する。

1.8

1)‐②高校訪問、進路ガイダンスの継続

2.5

2)ふれあい看護体験、オープンキャンパスの開催の継続

2.0

3)積極的な広報活動を実施する。

2.6

3)-①ホームページのタイムリーな更新

2.6

3)-②学校行事をメディアに露出する。

2.5

2.働きやすい環境づくりの促進を図る。

1)お互いを認めながら発言できる職場環境にする。

1.9

1)-①気持ちの良い挨拶の励行

2.4

1)—②教職員のコミュニケーションの促進

2.3

2)ワークライフバランスを考慮した働き方を実施する。

2.0

2)-①時間外労働の減少、有給取得率の向上(5日以上の取得)

2.4

3)校務分掌・マニュアルを整理し課題を抽出する。

2.3

Ⅲ将来構想

1.第1看護学科の今後のあり方について検討する

1)看護基礎教育の動向を把握して第1看護学科のあり方について検討する。

1.5

3.運営目標別評価

評価基準 3:評価結果を活用している 2:問題点を明らかにしている 1:現状を把握している 0:評価していない n.a.該当しない

運営方針

学校運営目標

結果

順位

教育成果の向上

1.教育内容と方法の充実を図り、看護師国家試験合格率100%を維持する。

2.2

2.カリキュラム改正を見据えた教育課程の点検・整備を行う。

1.9

3.社会人基礎力を経年的に育成する。

2.4

4.卒業率95%以上を維持できるように学生支援の充実を図る

2.4

5.教員の資質向上を図る。

1.7

学校運営の安定

1.受験者数を確保する(受験倍率3倍)。

2.2

2.働きやすい職場づくりの促進を図る。

2.2

看護学校の将来構想

1.第1看護学科の今後のあり方について検討する。

1.5

学校運営目標の得点の高い順に結果と課題を述べる。

「Ⅰ-3.社会人基礎力を経年的に育成する。」(2.4)

社会人基礎力の育成は、本校が長年取り組んできている学生に身につけてもらいたい力の一つである。各教員ともその意図を理解し真摯に取り組んでいる。その取り組みは、教科内外を通して学生への指導に生かされている。目標はおおむね達成されていると言える。何事にも、主体性を持って取り組むためには、社会人基礎力の育成は欠かせない。今後も継続して取り組む必要がある。

課題:①社会人基礎力育成の継続

Ⅰ―4.卒業率95%以上を維持できるように学生支援の充実を図る」(2.4)

今年の卒業生は42名入学、卒業39名の3名減の卒業率92.8%で、目標の95%には若干及ばなかった。1年次、2年次に休学者・退学者が多いことから、入学選考や学業継続ができるような更なる支援の強化が必要である。

課題:「休学者、退学者の減少」

Ⅰ-1.教育内容と方法の充実を図り、看護師国家試験合格率100%を維持する。」(2.2)

教育内容や方法の充実は、教員一人ひとりが努力している。今後も学生の意見を聞きながら、改善していきたい。その一方で、教員間の授業評価は十分とは言えず、学生に対してより良い授業や指導を提供するためには、教員間の授業評価(授業研究)も必要になる。授業評価をすることは教員の資質向上につながるため、次年度は教員間の授業評価を実施していく予定である。

また、支援しているが、再試験が多いことから、今の学生の学習方法や傾向、状況などを把握し、支援する方法を改善する必要がある。今年度は、昨年同様の看護師国家試験100%合格の目標を達成できなかった。不合格になった学生への指導方法などを振り返り、指導方法を改善する。

課題:

  1. 教員間の授業評価(授業研究)
  2. 再試験がでないような学生への指導方法の改善
  3. 国家試験への指導方法の改善

Ⅱ-1.受験者数を確保する(受験倍率3倍)」(2.2)

受験者確保については、業者の開催する進路ガイダンスへの参加やふれあい看護体験やオープンキャンパスなどで各教員とも努力している。また、ホームページをタイムリーに更新できるように事務と協力している。今年度の受験者数は、特別推薦入試、推薦入試、社会人入試、一般入試前期と後期をあわせて3倍の受験者数を確保でき、目標は達成できた。学校運営の安定化には、この状況を維持・発展させていく必要がある。

課題:受験者数の確保(受験倍率3倍)

Ⅱ-2.働きやすい職場づくりの促進を図る」(2.2)

教員数減少により、多忙になったり、一部の教員に負担がかかることになった。しかし、教員間でのコミュニケーションは促進され,良い関係が構築されている。今後も、教員間でのコミュニケーションを促進させるように継続していく。また見直した教務マニュアルをもとに業務の効率化を目指し、ワークライフバランスを確保する必要がある。

課題:働きやすい職場づくり

Ⅰ‐2.カリキュラム改正を見据えた教育課程の点検・整備を行う。」(1.9)

カリキュラム改正については、教員全員に周知できた。各教員とも関心がある。現在は、勉強会を始めたところで、ポリシーとの関係性や二―ドと制約などを踏まえた話し合いなどはできていない。新しいカリキュラムの内容を反映した科目づくりなどの話し合いは今後実施していく予定である。周知の段階にとどまっていることが得点1.9に反映していると考える。そのため、このような項目は達成にいたっていない。なお、新カリキュラムにあるICTの活用については、3課程で話し合う必要があるため、学科長会議を活用し、学校として整備していく必要がある。次年度は実践につながるような目標や取り組みに改定する。

卒業生には、ホームカミングディや実習などで情報交換を実施している。また、卒業時にアンケートを実施し、評価を受けている。しかし、卒業後に授業や指導などに対しての評価は受けていない。就業状況調査も平成27年から実施しておらず、本校の教育理念が達成されたかどうかの評価までには至っていない。その結果が得点1.8に反映されている。卒業後看護実践している方々からの意見も反映させ、広く評価をしたうえでカリキュラム改正を実施する必要を示唆している。この項目は、達成には至っていない。今後も継続していく。

以上のことから、ポリシーを反映した、入学生や卒業生像を考慮、卒業後の評価や就業状況を反映し、第1看護学科の特徴を踏まえたカリキュラム作成にしていくことが今年度の重点課題である。

課題:

  1. カリキュラム改正の実施
  2. 卒業生の学校評価
  3. 卒業生の就業調査

「Ⅰ-5.教員の資質向上を図る。」(1.7)

法的規定数は配置されていても、昨年度から教員の退職があり専任教員数が減少した。そのため、非常勤講師や実習指導教員の人数を増やし対応した。しかし、科目によっては、すべてを非常勤講師が授業しているものもある。また、クラス運営や学生指導、実習指導など、一部の教員に負担がかかる状況であった。実習に関しては、教員全員(学科長含む)が実習指導に出向かないといけない状況になり、卒業生から「国家試験対策の時ぐらい、担任にいてほしかった」という意見があった。実際、時間外勤務や研修会などにも偏りがあった。研究活動についても業務優先となり、研究する環境が整わなかった。目標の研修会・学会に積極的に参加するについては、教員の資質向上のためだけではなく、学生にも学習の質保証をする意味において、早急に専任教員の確保が必要である。令和2年度になり、新型コロナウィルス感染防止のために、非常勤講師派遣が厳しい施設もあり、専任教員の確保は、第1看護学科の最優先項目である。以上から、この目標は達成には至っていない。専任教員の確保は教員の資質向上につながり、学生の学習の保障となる。今後も継続して実施していく必要がある。

課題:専任教員の確保

「Ⅲ—1. 看護基礎教育の動向を把握して第1看護学科のあり方について検討する。」(1.5)

今年度は、厚生労働省主催の看護基礎教育検討会でカリキュラム改正についての検討が行われた。それを受けて、カリキュラム改正についての周知はできたが、十分な話し合いができなかった。今回の得点1.5は、目標の中で最低点となった。その理由は、カリキュラム改正での最終決定を待っていたこともあり、第1看護学科のあり方について話し合えなかったことではないかと考える。今後は、カリキュラム改正とともに学校運営委員会などの本校の将来構想を参考に、第1看護学科の今後のあり方について検討していく必要がある。この目標は達成には至っていない。第1看護学科のあり方は、学校運営の安定にも関連している。今後の看護界の動向を見ながら、検討していく必要がある。今年度は当面の課題であるカリキュラム改正を実施し、その中であり方についても検討していく必要がある。

課題:第1看護学科の今後のあり方の検討

4.学年別目標到達度

1)3年生学年別到達度(学生数40名)

学生と教員の評価はほぼ一致し、学生はどの学年別目標の項目もバランスよく到達したと評価した。

2)2年生学年別目標到達度(学生数41名)

学生と教員の評価は同傾向にあるが、差が出たのは「⑦地域全体の生活を理解できる」であり、学生は到達したと評価しているが、教員の到達度は低い。

3)1年生学年別目標到達度(学生数44名)

学生は教員よりも到達度が高く、2年生と同様に差が出たのは「⑩地域に対し興味関心を持つことができる」であり、この差の実態と解釈及び今後の変化に注視が必要である。

5.第1看護学科のポリシー

平成30年度と令和元年度で改善に取り組み、作成した第1看護学科のポリシー

3つのポリシー:第1看護学科

本校の理念

本校は松山医師会立看護専門学校として、地域医療に貢献できる看護専門職業人を育成する。

生命の尊厳を基盤に倫理観と感性を育み、豊かな人間形成を目指す。また、専門職業人として的確な判断のもとに安全で適切な看護技術を提供できる能力を養い、学生自ら学ぶ力を発揮・継続していく意欲を持ち続けられるように支援する。

アドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)

本校では、生命の尊厳と倫理観をもって看護をすることを基盤とし、松山市および愛媛県周辺地域の保健・医療・福祉の分野で幅広く活躍できる人材を育成することを目標としています。

そのため、第1看護学科で学ぶ学生には、次のような人を望みます。

  1. 看護学を学ぶための基礎的学力があり、向上心をもち真摯に学習を継続できる人
  2. 人間の生活および社会に関心をもち、人と人との関わりを大切にできる人
  3. 生命に対する倫理観ならびに道徳観がしっかりしている人
  4. 人間の生活、健康に関心が深く、この分野に貢献したいという意欲を持っている人
  5. 安定性、協調性があり、周囲の人々との良好な関係を保つことができる人
  6. 自ら気づき、主体的に考え、発言し、行動できる人
  7. 思いやりややさしさを持っている人
ディプロマ・ポリシー(卒業認定の方針)

第1看護学科では、次の能力を身につけ、かつ所定の単位を修得した学生に卒業を認定し、専門士の学位を授与します。

  1. 生活者としての人間を統合された存在として多角的に捉えることができる。
  2. 人間の生命、人間としての尊厳及び権利を尊重した判断および行動をすることができる。
  3. 人々の多様な価値観を認識して、専門職業人としての共感的態度および倫理に基づいた看護を実践することができる。
  4. 看護の対象となる人々の健康状態を判断し、科学的根拠に基づいた看護を実践することができる。
  5. 保健・医療・福祉チームの一員として多職種と連携・協働を図り調整的役割を果たすことができる。
  6. 松山市および愛媛県周辺の地域医療への理解を深め、地域の人々の生活を尊重・支援することができる。
  7. 自己の資質向上のため、看護に対する探究心・向上心をもち、主体的に学び続けることができる。
カリキュラム・ポリシー(教育課程編成・実施の方針)

第1看護学科のカリキュラムは、保健師助産師看護師学校養成所指定規則に従い、「基礎分野」「専門基礎分野」「専門分野Ⅰ」「専門分野Ⅱ」「統合分野」の5つの領域で構成しています。

5つの領域を1年次から3年次まで段階的に学びます。

図1 カリキュラム構造図

各発達段階やライフステージに関わらず人間の感情や行動等をつかさどる中心となるのは、「心」であると考えています。「心」の健康がどのような状況にあっても大切だと考えています。そのため、カリキュラムの中心に「精神看護学」を置いています。各領域の看護にも「心」は、含まれており、それを切り離しては考えることはできません。「心」は、看護の対象者のみではなく、看護する私たちも含まれています。

以上から、本校のカリキュラムは、精神看護学を中心に置き、学びを積みあげていくイメージです。

図2 カリキュラムデザイン

また、カリキュラムデザインは、漸進的としています。

1.教育課程の編成と教育内容

第1看護学科の教育課程の基本となる考え方は、これからの看護師に必要な能力として「倫理性」、「療養生活のマネジメント能力」、「連携・協働能力」、「コミュニケーション能力」に焦点をあて、「専門性と人間性」を兼ね備えた人材の育成のために看護実践者としての能力を育成する側面と生涯学習者としての成長を促す側面を教育内容として配置し、社会背景の変化と看護ニーズが存在するあらゆる場に対応できる基礎的能力を育成することを目指しています。

カリキュラムは、3年間で看護職者として必要な主要科目を講義や演習で学びます。また、入学後早期(5月下旬)に主たる実習施設である愛媛大学医学部附属病院で体験実習を行います。1年生後期では、基礎看護学実習Ⅰ・Ⅱを通して看護の基礎的な知識・技術を習得します。2年生の後期から3年生後期までを通して、本格的に現場で各領域の看護学実習を行います。3年生の最後には、3年間の集大成として統合実習を行います。また、3年生では、今までの実習体験を通して看護を振り返る看護研究や看護観を発表します。

2.教育方法

1年次から、早期に臨床現場で実習を経験し、段階的に臨地実習に備えるために、学内では、看護に必要な知識と技術をグループワークやシミュレーション学習を通して学びます。

また、松山医療圏の最前線で活躍する経験豊富な医師、看護師を中心とした講師が最新の医学、看護学をリアルに講義しています。さらに、3年間を通して、社会人に必要な能力の育成として、社会人基礎力の講義・演習をしています。2年次からは、保健所や在宅など松山市や愛媛県の地域の人々を意識した小グループでの実習を行います。そして、1年次から看護における法律・法規および看護における危機管理などを学び、3年間の集大成とした統合実習を行います。統合実習では、複数受け持ち制・リーダーシップ・危機管理など今まで学んだことを臨床現場で実際に実施し、倫理観や判断能力・看護実践能力を高めます。

看護を探究する力の育成として、自分の将来に対するイメージや看護観の確立を目指し看護観発表や看護研究を行います。

3.成績評価と進級・卒業制度

すべての授業において、客観的な評価基準に基づいて、筆記試験・口頭試問・レポートなどでより厳格な成績判定をします。学年ごとの進級には、一定の条件があります。3年間に取得しなければならない単位を取得し、教育課程を修了した者に、国家試験受験の資格が与えられ、専門士の資格が与えられます。

図3 カリキュラムツリー
アセスメントポリシー

松山看護専門学校では、ディプロマ・カリキュラム・アドミッションの3つのポリシーに基づき、学校全体レベル・学科・科目レベルの3段階で、学修成果等を検証する。

1.松山看護専門学校全体のポリシー

学生の志望進路(就職率)等から、「志」を持って入学した学生の学修成果の達成状況を検証する。

検証結果は、松山看護専門学校科の現状把握、全学的な教育改革・改善、学生・学習支援の改善等に活用する。

2.第1看護学科のアセスメントポリシー

卒業要件達成状況、単位修得状況、看護師国家試験結果等から教育課程全体を通した学修成果の達成状況を検証する。

3.科目ごとのアセスメントポリシー

シラバスで提示された授業等科目の学修目標に対する評価や学生授業評価等の結果から、科目ごとの学修成果の達成状況を検証する。

科目の成績評価は、科目の特性や到達目標などを踏まえて、教員がシラバスに明示した評価方法に沿って行う。